激しい変化の時代のなかで、企業はどのように未来を描くべきか。
今TTDCでは、2040年を見据えた未来構想プロジェクト「みらいーなNEXTプロジェクト」が動いています。
その中心を担っているのは、部署や専門領域を越えて集められた8名の若手社員たちです。
彼らは日々の忙しい通常業務から一度離れ、技術の進化や少子高齢化、環境問題といった巨大な社会課題を、自分たちの仕事とどう結びつけるべきかという試行錯誤を重ねてきました。
模索の先で見えてきたのは、遠い未来の予測ではなく、「これから自分たちはどう働くべきか」という等身大の覚悟でした。
今回は、プロジェクトを通じて視座をアップデートし、会社の未来を自分ごと化したメンバーたちの対話をお届けします。
◆プロジェクトメンバー ※所属は2026年5月時点
——まずは、「みらいーなNEXTプロジェクト」が始まったきっかけや目的を教えてください。
永田拓磨(以下、永田):会社の中長期計画である「Vision2030(2030年に向けたビジョン)」の次のステップとして、さらにその先の「2040年」を考えていこうという流れが社内でありました。その際、社長から「これからの会社を引っ張っていく若手の意見をしっかり取り入れたい」というお話があり、各部署からの推薦で私たち8名が集まりました。
——経営層がトップダウンで決めるのではなく、次世代を担う若手の皆さんにバトンが渡されたのですね。とはいえ、最初は戸惑いもあったのではないでしょうか?
保庭堂二(以下、保庭):そうですね。メンバーが決まったばかりのころは、未来のビジョンといってもまだ漠然としていました。
私はIP(知的財産)事業本部に所属していて、普段から特許情報の調査や分析を行っているので、「これからどうなるか」を予測すること自体は普段の仕事と通じる部分もありました。
ただ、今回は少子高齢化や環境問題といった大きな社会課題まで含めて考える必要があり、いつもの業務とはまったく違う、一歩引いた広い視点が求められるなと感じました。
髙橋道貴(以下、髙橋):私は計測器の精度を保証する仕事をしています。ちょうどそのころ、自分自身の働き方として、「お客様から言われたとおりに動くだけでなく、困りごとを先回りして提案できる存在になりたい」と考えていた時期でした。
そのため、このプロジェクトで学ぶ「未来を先読みする考え方」に、日々の仕事をより良くするヒントがあるかもしれないと期待して参加しました。
梶田哲也(以下、梶田):私は自動運転向けAIのデータをつくる仕事をしています。交通事故削減や物流の人手不足など、社会課題に向き合う領域です。
日々の業務はどうしても目の前の作業に集中してルーティン化しがちなので、一歩引いて「自分たちの仕事がどう未来につながるのか」を本気で議論できるこのプロジェクトは、すごく刺激になりました。
——2030年以降の未来を見据え、ベースとなる「5つの社会課題」はどのように整理したのですか?
梶田:会社の未来を描くには、まず「2030年以降の社会」という前提を知る必要がありました。そこで、未来に影響を与えそうな課題の洗い出しからスタートしたんです。
メンバーがそれぞれ様々な文献からAIやプログラムを活用してリストアップした社会課題は400件以上。そこからさらにAIを使ってデータを細かく分類し、最終的に「人口・雇用・教育・労働」「高齢化・健康・医療」「デジタル・DX」「都市・インフラ・地域」「エネルギー・気候変動・環境」という5つのテーマに整理していきました。
小山美波(以下、小山):この5つのテーマをもとに、2040年の社会予測を立てました。「どんな未来が来ても、技術は進化し続ける」という前提のもと、技術と社会がどう心地よく共生していくかを考えていったのです。
——未来を予測するとき、つい「明るいか・暗いか」の二択で考えてしまいがちですが、議論はどのように進んだのですか?
小山:じつは、私たちがもっとも大切にしていたのが、「ポジティブかネガティブかで未来を分けない」という考え方でした。
これは経営本部から参加した道本さんが強い思いをもって伝えていたことで、全員の共通ルールになりました。
私たちは未来の可能性を「最適化×調和の世界」と「不一致×多様化の世界」の2つに分けました。「不一致」という言葉は一見マイナスなイメージを持ちますが、それを単純に「悪いもの」として扱いません。物事を簡単に白黒つけない姿勢は、難しくもあり、このプロジェクトの面白い部分でした。
「最適化×調和の世界」は、テクノロジーや制度が自然に溶け込み、誰にとっても快適な状態です。
一方の「不一致×多様化の世界」は、個人の価値観がバラバラで、あえて足並みを揃えない状態です。すべてが画一化されないこと自体が、新しい価値や文化を生む未来だと捉えています。
杉本:TTDCは、どちらの未来が来ても技術で価値を提供できると感じています。ちなみに、私個人としては「最適化×調和の世界」で力を発揮したいなと思いました。
技術的には、一人ひとりの要望に合わせたオーダーメイドのシミュレーターを作ることも可能ですが、より多くの人に役立つ、社会全体に最適化されたシミュレーターを作るほうに魅力を感じたからです。
このように正解を一つに絞らずあらゆる未来を想像しましたが、言葉だけでは抽象的になるため、AIで動画やイラストを生成してイメージを共有しながら進めました。
池上ゆか(以下、池上):とくにAIと共生するイメージは、計測シミュレーション事業本部とIP事業本部でまったく違っていて面白かったですよね。
普段は関わりのないバラバラな部署の8人だからこそ、一人では気づけない意味のある議論ができました。
小山:そうなんです。どれだけ議論しても絶対の正解は出ません。でも、その「答えが出ない状態」で考え続けることこそがプロジェクトの本質であり、これからの不確実な時代を生き抜く力になるのだと思います。
——プロジェクトを通して、皆さん自身の意識にはどのような変化がありましたか?
小山:私はもともと「答えが出ない状態」が苦手でした。普段の仕事でもすべての道筋をカチッと立て、可能性をすべて考慮しないと進めないタイプだったんです。
ですが、このプロジェクトを経て「答えをいったん保留にしたまま、まずは一歩進めてみてもいいんだ」と思えるようになりました。自分の中では大きな変化です。
永田:たしかに、未来シナリオを作るうえでも「正確性」にこだわりすぎなくていい、という感覚が徐々に生まれていきましたよね。データとして正しいかよりも、それを使って「私たちがどう未来を考えていくか」そのものに意味があると気づかされました。
考えるプロセスを重ね、「自分たちがどうなりたいか」を役員に伝えることができてよかったと思っています。
——正解を追うだけでなく、思考のプロセスそのものに価値があったのですね。社会課題の見え方も変わりましたか?
杉本:私は高齢化と医療分野をリサーチしたのですが、調べるほど厳しい現実が見えてきました。
労働人口は確実に減るため、私たちの働き方も必ず変わります。
今まではどこか他人事だった社会課題でしたが、プロジェクトを通じて「未来の予習」をしたことで、「今こそ自分たちが動かなければ」という原動力に変わりました。
この危機感や知見は、さっそく自部署のメンバーにも共有しています。
池上:「未来」というと遠い話に聞こえますが、私たちが描いた2040年はすぐそこまで迫っています。
だからこそ、その世界でTTDCがお客様にどんな新しい価値を届けられるか本気で考えました。
未来の社会を想像することは、結局「自分たちの今の働き方」をアップデートすることに直結しているのだと実感しています。
——プロジェクトの最後に行われた役員陣へのプレゼンはいかがでしたか?
小山:直前まで不安もありました。自分の担当領域は理解できていても、他のメンバーの専門分野まで完璧に頭に入っているか、自信が持てない部分もあったので……。
でも、いざプレゼンを始めると、役員の皆さんの反応はものすごく温かかったんです。「若手がこれだけ本気で未来を考え抜いたこと」そのものを評価してくださり、しっかりと言葉が届いた手応えを感じました。
永田:未来シナリオの内容だけでなく、AIの活用方法や、部署の垣根を越えて若手世代が本音で対話したこと自体に、価値を見出してくれたのだと思います。
そのうえで、経営陣と同じ目線に立ち「会社をより成長させるために、どこへ優先して投資すべきか」という具体的な経営提案まで踏み込めていたら、さらに良かったなという気づきもありました。
髙橋:この「みらいーなNEXTプロジェクト」は今後も続いていきます。今回の手応えも、逆に不十分だった悔しさも含めて、より良い未来に向けて次のチームにバトンを渡したいですね。
通常業務との並行は本当に大変でしたが、挑戦して良かったと心から感じています。
——プロジェクトを通じて、一歩引いた視点から「TTDCという会社の強み」を見つめ直す機会にもなったのではないでしょうか?
梶田:TTDCには「計測シミュレーション」と「知的財産」という2本の柱があり、その特性を活かしてトヨタグループの様々な開発現場に深く入り込んでいます。
私自身も今、ウーブン・バイ・トヨタのロケーションで仕事をしています。あらゆる現場にメンバーがいるからこそ、人と人、組織と組織をつないだり、現場のリアルな課題をいち早く共有して改善できる。
これこそが、私たちだから生み出せる唯一無二の価値だと再認識しました。
髙橋:それは、私が携わっている計測器の「校正業務」でも実感します。自動車技術の進化に伴い、計測器や評価手法も変化し、校正技術にも継続的なアップデートが求められています。
一方、先端計測技術を開発する国の研究機関にとって、現場で生まれる多様な課題やニーズを直接つかむのは容易ではありません。
TTDCは、自動車開発の現場に近い立場を活かし、現場で得られた知見を国の研究機関との連携を通じて計測技術や校正技術の発展につなげています。
そこが、私たちの強みだと感じています。
杉本:新しいものを受け入れる「柔軟さ」も強みですよね。私のいるシミュレーションエンジニアリング部は技術系ということもあり、新しい技術が好きな人が集まっています。
上司や先輩も好奇心旺盛で頭が柔らかい人ばかり。立場の垣根を越えて「この新技術どう思う?」といったやり取りが普段から自然に生まれています。
保庭:困りごとに対して自発的にアイデアを出す「創意くふう提案制度」(※)をはじめ、業務を自分たちで良くしていく風土が根付いていますよね。
優れた活動を表彰する「TTDC-Award」(※)も、お互いのチャレンジを共有して学び合う素晴らしい機会になっています。
※創意くふう提案制度:トヨタで1951年から始まった制度(当時は創意工夫提案活動)。業務の効率化や課題の改善策、原価低減を実践する方法など、何か効果のある提案を行うことで、評価に応じて報奨金が得られる
※TTDC-Award:TTDC社内において、日々のチャレンジや成果を全社で共有し、祝う風土を醸成するための表彰制度
——このプロジェクトで得た広い視野や考え方を、今後はそれぞれの職場でどのように活かしていきますか?
髙橋:今回の経験は、自分自身の仕事へのモチベーションを大きく引き上げてくれました。今後は私が得たワクワク感を、自部署の後輩や部下にもつなげていきたいです。
そのために、誰もが「やってみよう」と自発的に手を挙げられて、失敗してもお互いにカバーし合える温かい職場の空気を作っていきたいですね。
永田:主体的にチャレンジできる人や、好奇心旺盛で新しいことを楽しんで学べる人が一人でも増えると、周りのメンバーのやる気も自然と底上げされていきますよね。
保庭:社会課題から未来を考えたことで、「相手が何に困っているのか、その立場や気持ちに寄り添うこと」こそが未来を想像するスタートラインだと気づかされました。
この「相手の目線に立つ」という視点の転換は、日々の仕事の中でもすぐに実践できることだと思います。
池上:まったく同感です。単に言われた通りの商品や納品物を作るだけでなく、「お客様のその先にある課題」まで想像する姿勢を持つこと。
それによって初めて、相手にとって本当にベストな選択を提案できる企業になれるのだと感じました。
小山:未来を考えることは、一人ではできません。今回も、いろんな部署の人と対話したからこそ、自分にはなかった視点やアイデアをもらうことができました。
だからこそ、まずは「目の前の人を理解しようとする姿勢」や「相手に興味を持つこと」が何よりも大事だと改めて思っています。
私たちが作った未来シナリオにも絶対の正解はありません。
これからの職場でも、メンバーの「まずやってみる」という挑戦を否定せず、皆で一緒に試行錯誤していける空気を作ること。
それ自体が、TTDCの新しい未来につながっていくのだと信じています。
未来の社会と向き合い、自らの「仕事」をアップデート
未来の課題「1.人口・雇用・教育・労働」「2.高齢化・健康・医療」
未来の課題「3.デジタル・DX」「4.都市・インフラ・地域」
未来の課題「5.エネルギー・気候変動・環境」